排泄日誌の活用法について

令和3年度の介護報酬改定で「排せつ支援加算」が見直され、排泄状態の改善(アウトカム)について評価する新たな区分が設けられました。

そこで今回は、今後どのような排泄ケアを行うとよいのか、と考えている皆様に排泄ケアにかかわる情報を谷口珠実先生に解説いただきます。

排泄日誌をつけてみませんか?

排泄の介護を行っていると、「食事の時間は決められても、排泄はいつ出るのかわからないので、予測がつきにくく対応が大変」という声を聞きます。そして、排泄物は放置しておくと、臭いが周囲に漂い、高齢者の脆弱な皮膚のトラブルの原因になります。

では、排泄の予測はできないのでしょうか?実は「ある程度は予測ができる」と考えられています。排泄を予測するための最初の手段としては、排泄の状態を観察して記録すること、すなわちそれは排泄日誌をつけることから始まります。

排泄日誌をつける意義

日誌ですのでいろいろな事を書き込んで頂いてもよいのですが、排泄の傾向を把握するための記録ですから、排泄に関係することを記載することで、その関連性の影響に気づいたり、生活のリズムが把握しやすくなったりします。

実は排泄は環境や生活の影響を大きく受けています。そして、排泄にかかわる身体の機能は複合されたものが多く、排泄の状況を知ることは生活状況を知ることにも役立ちます。つまり、排泄に関連することを情報として記載しておく、それが排泄日誌です。排泄日誌に記載された情報をもとにして、ご利用者様の身体や生活の状況として、どのようなことが起こっているのか、を考える材料として用いていきます。

排泄に影響するのは、朝起きてから寝るまでの生活リズムですから、起床時間と就寝時間を記載しましょう。起きてから昼間活動している時間帯の排泄の回数を「昼間排尿回数」と言い、就寝してから朝起きるまでの夜間の睡眠時間帯の排泄の回数を「夜間排尿回数」と言います。これらに加え、排尿の量や色、排泄物の状態を観察して記録します。

ではどのような内容を排泄日誌につけるとよいのか、排尿、排便それぞれについて次で詳しく説明していきます。

排尿の記録内容

排尿の場合、起床時間と就寝時間、排尿の時刻と排尿の量、自排尿なのかおむつに排尿した量の計測であるのか、尿漏れが有るのか否か、強い尿意切迫感(突然の尿意)などを基本的に記載します。可能であればさらに、飲水量や種類、食事の摂取量、運動や活動量、尿漏れが有る場合の状況、服薬状況などの情報も記載するとよいでしょう。

基本的に排尿の観察は短くても24時間行い、可能であれば3日間以上連続で観察します。24時間測定することで、1日の排尿回数、1日の排尿量の合計、1回の平均排尿量の計算が可能になります。

排尿の観察ポイント

1日の排尿の回数は4~8回程度ですが、1日15回以上もトイレに通っている、逆に排尿に行っていない(または排尿が無い)というのは、何らかの異常が起こっているのではないかと考えられます。

1日の排尿量の合計は、24時間分の排尿量を加算したものです。1日の排尿量の標準値は、体格や体重により異なりますが、おおよそ、1000ml~1500mlくらいを目安にしてください。

1回の平均排尿量は、24時間の排尿量を1日の排尿回数で割ります。1回の排尿量は、高齢者では250ml~500ml程度と幅がありますが、いつも少ない、いつも多い、場合には何か原因があるかもしれない、と考えられます。

排便の記録内容

排便は、排便時間や排便の形状、色を観察します。便が出た時間と便の色、便の形状を記載します。

便の形は、ブリストルスケールを確認し、1から7の数字で記載するとよいでしょう。1はコロコロの硬便、2は短く固まった硬便、3は表面にひび割れのあるソーセージ状の便、4は表面が滑らかで、軟らかいソーセージ状(バナナ状)、5は水分が多く、軟らかくて半分固形の便、6は不定形や泥状の便、7は水様で固形物がない液体状の便です。1と2は便秘、3・4・5は普通便、6・7は下痢と呼んでいます。

排便の観察ポイント

排便の量も観察して記載するとよいのですが、量を測定することは難しいため、大きさの目分量を示します。施設内であれば、基準にしやすい、鶏卵大やテニスボール、ピンポン玉、拳大など、皆で共有できるサイズを決めて記載するとよいでしょう。

食事の種類や内容により、便の色は異なりますが、一般的な便の色は、茶色から黄色です。明らかに異常な色は、血液に近い赤やオレンジ色、胃などで出血している場合の黒色、胆石などがある場合の白色などです。このような場合には医師の診察が必要です。

排泄日誌の活用法

排尿日誌の活用法

記載した排尿日誌を見ると、1日の排尿の回数や時間、1回の排尿量がわかります。最初に正常な排尿なのか、回数や時間や量に異常な値が示されていないかを検討します。異常のある場合やご本人が困っている場合には、日常生活が過ごしやすく気持ちよく生活できるように支援していくことが大切です。

例えば、薬(特に利尿を促す薬剤)を服薬した直後にだけ、何度も排尿に行くという場合は薬の効果であると考えられます。ただし、「何度もトイレに行くのが大変でよく転び困っている」という状況があれば主治医や看護師に「排尿日誌」を用いて相談すると、話が伝わりやすくなりますし、解決方法を考える糸口になるでしょう。

また、排尿の異常はご本人自身では気づきにくく、相談しにくいことです。加齢のせいで「トイレが近くなった」と感じる方も多く、年のせいと諦めてしまう方も少なくありません。しかし、トイレが近くなった原因は、「突然トイレに行きたくなる(強い尿意切迫感がある)」場合には、過活動膀胱という疾患かもしれません。治療を行った方がよいのか、治療法があるのかを考える場合にも、排尿日誌が役立ちます。排尿日誌は、利用者の排尿の状況を知るものであり、正常や異常を判別し、治療の前後で比較する際にも役立てることができます。

排尿日誌は出ている排泄を見ることには優れていますが、出てこない尿や便を把握することはできません。出ていない尿や便を確認するためには、超音波診断装置を用いることが有用です。最近では、簡便に測定できる装置も活用できますので、排尿日誌に加え残尿測定を行うと、下部尿路の機能の異常が判別できます。

排便日誌の活用法

最初に、排便と排便の間隔を確認しましょう。排便の周期は人それぞれですから、毎日排便がある人もいれば、2~3日に一度という場合もあります。さらに排便がある時間を確認すると、1日の生活習慣の中での排便の時間帯がわかります。例えば、朝起きて朝食を摂ることで胃や腸が動き出し、体内の反射が起きて便意が起こることは誰にでもありますが、体操や散歩を行ったあとに便が出やすいなど個別な特徴がある場合、生活との関係性を検討してみましょう。

下剤を服用している場合は、下剤の種類と服薬時間を記載します。下剤の種類には、非刺激性下剤と刺激性下剤があります。服薬時間と排便のタイミングを観察し、刺激性下剤を減らすような、飲水量や食事の種類、生活の活動量などの影響が考えられないかを排泄日誌から考えてみましょう。

排尿日誌から考えるケア方法

毎日の食事量と飲水量、生活の活動量の確認を行いましょう。この事例の場合、飲水量も食事量も減っているため、摂取できない原因を探り、改善策の検討が必要です。促しにより摂取できる場合には、時間を決めて促しましょう。併せて活動量を増やすためのイベントへの参加を促すこともおすすめです。

日常生活の維持が排泄には不可欠であるものの、生活の維持ができない状況においては腹部の「の」の字マッサージや腹部の罨法(ホットカイロなどでもよい)などが有効です。排便時の姿勢は、便座に座ること、足を床面につけて、上肢を前傾姿勢にして、息を止めていきみをかけることが必要となります。

下剤を用いる場合には、最初に非刺激性下剤から使用しましょう。非刺激性下剤でも排泄が無い場合には刺激性下剤を用いますが、刺激性下剤を継続して使用すると腸には悪影響があるため、注意が必要です。刺激性下剤は用いても翌日に反応の便が出ない場合には、効果が無いと考え、連用は行わないようにしましょう。


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