自動排泄ロボットが注目されている理由

「介護ロボットってどうなの?」
このように思っている介護職の方は少なくないはず。
近年、4人に1人が65歳以上という超高齢化社会に突入した日本において、新しい介護の担い手として介護ロボットが注目を浴びています。

そこで、介護ロボットが注目される理由やどのような種類があるのか、またメリットやデメリットについて紹介していきたいと思います。介護ロボットに興味のある方や介護ロボットの導入を考えている方など、ぜひ参考にしてみてください!

介護ロボットとは?

そもそも、介護ロボットとはどのようなロボットなのでしょうか?
介護ロボットとは、厚生労働省が示している「ロボットの定義」を満たしたうえで「ロボット技術が応用され利用者の自立支援や介護者の負担軽減に役立つ介護機器」を介護ロボットと呼んでいます。

ロボットの定義とは…
●情報を感知(センサー系)
●判断し(知能・制御系)
●動作する(駆動系)
上記3つの要素技術を有する、知能化した機械システムをロボットと呼ぶ。
とされています。(※)

「介護ロボット」といっても、明確に「どのような機能があるもの」など決められていないため、その形や種類は様々あります。

ロボットと聞いて、誰もが思い浮かべるのは二足歩行の「人型ロボット」ではないでしょうか?
介護現場で活躍する介護ロボットの多くは、人型ロボットではなく介護者の身体に取り付け移乗介助時の力のサポートをおこなってくれるロボットや要介護者本人が装着し歩行をサポートしてくれるロボット、また見守りのセンサーなどがほとんどです。

しかし介護ロボットの中には介助や運動機能のサポートなどの他に、心を癒す「セラピーロボット」もあります。セラピーロボットは犬や猫などの動物型ロボットが多く、心を癒す効果や認知症予防を目的に開発されました。
なかには、人口知能(AI)を搭載し対象者と会話をすることが可能なロボットもあり、コミュニケーションをとれることで認知能力の維持向上やストレスの軽減に繋がると言われています。

介護ロボットが注目されている理由

介護ロボットが注目されているのには、介護施設の慢性的な人手不足や介護者の身体的・精神的負担の軽減に役立つこと、また要介護者の心のケアが可能なロボットが出てきていることが理由です。

日本国内においても、ベンチャー企業などが介護現場で活躍できる介護ロボットの開発をスタートし、介護施設や在宅介護を受けてる要介護者、またその家族の手助けとなる様々なロボットが発売されています。
しかし実際のところ、政府や開発企業が想定していたペースで介護施設への介護ロボットの普及は進んでいないのが現状です。

介護ロボットの普及率

実際に介護ロボットは、どのくらい普及しているのでしょうか?
厚生労働省が発表している2020年(令和元年)度介護労働実態調査結果の「事業所における介護労働実態調査 結果報告書」を見てみると、介護ロボットの導入率は以下のようになっていました。

このように、介護ロボットの導入率は低く「いずれも導入していない」が75.6%とほとんど占めています。介護ロボットの導入率が最も高かったのは「見守り・コミュニケーション(施設型)」で3.7%でした。

上記の表を見て分かるように、介護ロボットを導入してるところは非常に少なく、普及しているとは言えない状況です。
介護ロボットを導入することで、介護者の負担軽減など役立つものであるのに、これほど普及が進んでいないのにはどのような理由があるのでしょうか?

介護ロボットが普及しづらいのには、以下の理由が挙げられます。
・導入できる予算がない
・ロボットの維持管理が大変
・使いこなせるか心配

など

介護ロボットは、比較的に安価とされるセラピー(癒し系)ロボットで数万円~数十万円、おもに介護施設における導入を目的に開発された移乗などをサポートするロボットは数百万円するなどとても高額になります。
そのため、介護ロボットを導入したいと考えていても、予算的に導入することができない介護施設が多いという状況です。

また、なかにはホスピタリティを重視するという観点から介護ロボットを導入しない施設もあります。この場合、ただ単にサービスを提供するのが目的だけではなく、心理的な側面まで汲み取ったサービスを提供することこそが、利用者の満足や安心など心の充足に繋がると考えているからです。

しかしながら、介護ロボットを導入したからといってホスピタリティが失われるわけではありません。体力が必要で重労働だった部分などを介護ロボットに助けてもらうことで、介護者に余裕が生まれより要介護者と深く関われるようにもなります。

介護ロボットの種類はどのくらいある?

介護ロボットもどんどん進化しており、人型ロボットだけではなく様々なタイプのロボットが開発され発売されています。介護ロボットは、介護スタッフなど介護者向けのものと要介護者向けのものがありますが、どのくらいの種類があるのか調べてみました。

介護ロボットは大きく「介護支援型」「自立支援型」「コミュニケーション/セキュリティ型」の3つの種類に分かれます。
それぞれどのような介護ロボットがあるのか詳しく見ていきましょう。

【介護支援型】
介護支援型のロボットとは、移乗や入浴、排せつなどの介護業務の支援を目的としたロボットです。介護施設などで導入されることが多く、介護スタッフの身体的負担や心理的負担を軽減・解消することに役立ちます。
また、介護を受ける高齢者も安心して体を任せられるため介助を受ける際の恐怖感や緊張感を和らげることができます。

【自立支援型】
自立支援型のロボットとは、要介護者の歩行や食事、リハビリの補助をしてくれるロボットです。例えば、膝の痛みが原因であまり歩かなくなってしまった方の膝に装着することで、歩行する際の膝にかかる負担を軽減し、自立歩行や立ったり座ったりの動作をサポートしてくれるロボットなどがあります。
自立支援型のロボットを利用することで、これまで自分では出来なかったことも自分で出来るようになり、自立した生活を送れるようになるため利用者の心理的負担が軽減されます。

【コミュニケーション/セキュリティ型】
コミュニケーション/セキュリティ型のロボットとは、人工知能(AI)を搭載し人とのコミュニケーションを図ったり、見守りセンサーによって要介護者の様子をチェックしてくれたりするロボットです。
コミュニケーションロボットは、人と会話ができるだけではありません。レクリエーションをサポートするタイプ、何らかの反応・周囲の環境に応じてロボットが反応し、鳴き声や声かけをするタイプ、また利用者の状態を検知し声かけをおこない動作を促すタイプのロボットなどがあります。
見守りロボットは、認知症の方や1人住まいの高齢者の方、要介護者の方の様子を自動で感知し、必要に応じてアラームで知らせてくれるロボットです。

<<介護ロボットの種類>>
介護現場でロボットが活躍している場面は多岐に渡り、目的や分野ごとに様々なロボットが開発されています。目的別の介護ロボットの種類は以下のようになっています。
<移乗支援>
・移乗支援ロボット(装着型)
・移乗支援ロボット(非装着型)

<移動支援>
・移動支援ロボット(屋外用)
・移動支援ロボット(屋内用)
・移動支援ロボット(装着型)

<排せつ支援>
・排せつ支援ロボット(排せつ物処理型)
・排せつ支援ロボット(トイレ誘導型)
・排せつ支援ロボット(動作支援型)

<入浴支援>
・入浴支援ロボット
<食事支援>
・食事支援ロボット

<見守り・コミュニケーション>
・見守りロボット(介護施設型)
・見守りロボット(在宅型)
・コミュニケーション(状態検知対応型)
・コミュニケーション(環境・操作反応型)
・コミュニケーション(介護者代替プログラム実施型)

<リハビリ>
・リハビリロボット
など

このように、数多くの介護ロボットが開発されており、それぞれの分野の中でもさらに目的に応じてタイプが細かく分かれているものもあります。

介護ロボットの開発支援

経済産業省厚生労働省では、介護ロボットの開発・普及の促進のため「ロボット技術の介護利用における重点分野」を定めています。
その定められている重点分野が以下の6分野13項目です。

介護ロボットの種類で紹介した「リハビリロボット」は、上記の重点分野には現在含まれていませんが、2018年度の介護報酬改定により「自立支援介護」に重きを置く介護スタイルへと変化したことで注目されている分野のロボットです。

たとえば、身体機能の状態を測定するロボットやリハビリをサポートしてくれるロボットなど、リハビリに特化しており期待されている介護ロボットです。
今後、自立支援介護がもっと進めばリハビリロボットもさらに注目を集め重点分野に追加されるかもしれません。

介護ロボットを導入するメリット

介護ロボットを導入するメリットについてみていきましょう。

介護ロボットを導入するメリットは以下の5つ
◇介護者の身体的負担を軽減できる
◇介護者の心理的負担が軽減できる
◇介護現場の作業が効率的におこなえる
◇要介護者の身体的・精神的状態が良くなる
◇要介護者が安心して睡眠が取れるようになる

メリット1|介護者の身体的負担を軽減できる

介護の仕事は、移乗介助や入浴介助など体力や中腰での作業がとても多い仕事であるため、職業病ともいえる腰痛を持っている方は多いです。介護ロボットを使用することで、体力のいる介助業務の負担を軽減することができます。

メリット2|介護者の心理的負担が軽減できる

介護ロボットを導入することで、介助をする際や夜間の見回りなどの心理的な負担が軽減されます。たとえば、見守りセンサーなどを使用することで、バイタルや離床を検知してくれるため、夜間の見回りに行く回数の減少や体調の変化などに気付きやすくなります。

メリット3|介護現場の作業が効率的におこなえる

人手が必要となっていた業務を介護ロボットに任せることができるため、作業にかかる時間の短縮や空いた時間に別の業務をおこなうことができ、効率的に仕事を進められます。また、素早く対応することも可能になるため排せつの失敗などが減り、着替えやシーツ交換などの業務も少なくなります。

メリット4|要介護者の身体的・精神的状態が良くなる

要介護者が介護ロボットを使用することで、身体機能の維持・向上や心を癒し精神状態を安定させる効果があります。また、要介護者が介護を受ける際に感じるストレスを軽減させることができます。

メリット5|要介護者が安心して睡眠が取れるようになる

見守りセンサーなどの介護ロボットを導入することで、要介護者は何かあればすぐに来てくれるという安心感を持てるため、夜間に安心して就寝することができるようになります。
その結果、要介護者の睡眠の質が上がり体調にも良い影響を与えます。また、介護者にとっても要介護者がしっかりと睡眠をとれるようになることで、夜中の見回りやシーツ交換の回数などが減るというメリットもあります。

このように、介護者と要介護者にとっても介護ロボットを利用することには大きなメリットがあります。対象者のニーズに合った介護ロボットを導入することで本人や家族のQOLの向上、介護の負担軽減に繋がり、双方が安心して過ごせる時間が増えます。

介護ロボットを導入するデメリット

では、介護ロボットのデメリットとはどのようなことがあるのでしょうか?
介護ロボットを導入するデメリットは3つ。
・導入コストが高い
・管理スペースが必要
・操作が難しい
ということが挙げられます。

デメリット1|導入コストが高い

公益財団法人介護労働安定センターの「令和元年度介護労働実態調査」によると、介護ロボット導入の課題・問題として全体の55.3%が「導入する予算がない」と回答していました。
介護ロボットの値段は、セラピーロボットなどでも数万円からとなっており、大型のものや機能や性能が充実しているものであれば数百万円の費用がかかります。
ロボットによってはレンタルできるものもありますが、それでも月々のレンタル費用は数万円と決して安くありません。
そのため、介護ロボットを導入したくても導入できない施設が多く、普及が進まない理由の一つとなっています。

デメリット2|管理スペースが必要

介護ロボットは小型のものから大型のものまであります。
しかし、移乗や移動のロボットは大型のものが多いため、大型の介護ロボットを導入する際は設置するスペースや管理するスペースを確保することが必要になります。
そのため規模があまり大きくない施設にとっては、設置や管理するスペースが必要になることはデメリットの一つと言えます。

デメリット3|操作が難しい

介護ロボットは操作に慣れてしまえばとても便利な機器ですが、操作に慣れるまでは難しく感じてしまいます。しかし、安全に介護ロボットを利用するためには、適切な操作方法を理解しておかなければなりません。
そのため、導入直後はとくに介護ロボットの機能や操作方法を理解し、操作練習をおこなう時間も必要となるため、一時的ではあるもののスタッフの負担が増えてしまうのはデメリットと言えます。

今後の課題

介護者と要介護者にとってメリットの多い介護ロボットがもっと普及するには、利用者側と開発側の双方が「理解する努力」をすることが大切です。
介護ロボットを利用する側であれば「ロボットへの正しい理解と知識を身につけること」
介護ロボットを開発する側であれば「介護現場の実態・ニーズをしっかりと把握し理解すること」
これらが、両者にとっての課題といえるでしょう。


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