介護ロボットを導入するとどんないい良いことがある?

介護保険で利用できるサービスについて

介護ロボットを導入すると何ができる?

介護ロボットとは、これまで人に頼ることが多かった身体的な労働、例えば要介護者をベッドから車いす車いすからトイレ等に移乗させる等の作業の一部を担う機器のことを言います。身体的な負担がきつく、なかなか人材が集まらない介護業界の救世主として、多くの期待を集めています。今回は、介護ロボット開発への取組みや、介護現場で活躍中のロボットの種類について紹介します。

介護ロボットが注目される理由

現在、老人ホームやデイサービスなどで「介護ロボット」を導入するケースが増えています。その背景として、日本は少子高齢化の現状で各産業において深刻な労働者不足を招くことが懸念されます。今後の高齢化によって特に需要が増加すると見込まれる介護サービスでは、労働力不足に対して早急な対応が必要です。また、経済産業省の「将来の介護需給に対する高齢者ケアシステムに関する研究会報告書(2018年)」によると、介護を必要とする高齢者の数は、2000年に比べ2015年の段階で約2.5倍にも上っており、介護業界は慢性的な人手不足です。このまま増え続けると、2035年には79万人の人員不足が予想されています。こうした介護サービスの状況から、介護ロボットや介護機器などを導入し、サービスの質改善や生産性の向上などに役立てられることが期待されており注目されているのです。

介護ロボット活用のメリット

介護スタッフ不足の救世主として注目を集めているのが介護ロボットです。介護現場には、要介護者の移動支援、排泄支援、認知症の見守り、歩行訓練支援など、さまざまな介護ロボットが導入されています。これまではスタッフの労力に頼るものがほとんどで、スタッフの身体的・精神的負担も大きかったのですが、介護ロボットの導入によって、その負担も軽減できるようになります。

介護ロボットの種類

介護ロボットには、主に見守り支援や、移動支援などさまざまな種類があります。具体的にそれぞれの特徴を紹介します。

【見守りロボット】

見守りロボットは、要介護者の状態を自動で感知し、必要に応じて通知してくれるロボットです。利用者の自立した生活を支援するだけでなく、施設にとっても巡回数が減るなどの利便性があります。また、見守りロボットには「介護施設型」と「在宅型」の2種類があります。
介護施設
センサーや外部通信機能を備えたロボットで、複数の要介護者を同時に見守ることができます。例えばベッドから離れようとすると、その状態をセンサーで検知し介護スタッフに通報ができる仕組みになっています。
●在宅型
在宅介護で使用するロボットで、転倒検知センサーや外部通信機能を備えています。浴室や暗所など複数の部屋を同時に見守ることができ、要介護者が転倒した場合、センサーが検知し介護者に通報するシステムになっています。

【移乗支援ロボット】

移乗支援ロボットは、移乗をサポートする人がロボットスーツを着用して、ベッドなどから車いす車いすから便座への移乗を支援する際の身体的な負担を軽減させます。また、移乗支援ロボットは「装着型」と「非装着型」の2種類に分かれています。
●装着型
介護者が一人で着脱することができ、ベッド、車いす、トイレなどへ移乗をサポートする際に、腰の負担を軽減させるタイプ。
●非装着型
介護者が抱き上げ動作をする際の身体的な負担を減らす機器。非装着型には、要介護者を正面から抱え込む「抱え込み式」、ベッドに敷いたシーツごと抱き上げる「シート持ち上げ式」、ベッドと車いすが合体した「ベッド一体型」の3種類があります。

【移動支援ロボット】

移動支援ロボットは、要介護者の外出をサポートし、移動先での転倒予防や歩行を補助します。移動支援ロボットには、外出をサポートする「屋外用」、トイレの往復やトイレ内での姿勢の保持を支援する「屋内用」、屋外での転倒予防や歩行を補助する「装着型歩行支援」の3種類があります。

【排泄支援ロボット】

排泄支援ロボットは、要介護者の排泄をサポートするもので、中には排泄処理を自動で行うものもあります。利用者は専用カップを装着し、専用カップが排泄を検知したら、自動で吸引、洗浄、乾燥まで行います。排泄物はタンクに溜めることができるので、最後に介護者がトイレに流して処理を行います。排泄行為が見られることもないので、心理的な負担も少なくなるのが特徴です。

【入浴支援ロボット】

入浴支援ロボットは、要介護者が入浴する際の動作を支援する機器です。浴槽に取り付けた機器のシートが電動で昇降し、浴槽内での介護者の立ち座りをサポートすることで、介護者の身体的な負担を軽減させます。

【リハビリロボット】

リハビリロボットは、身体機能の訓練やリハビリテーションをサポートするロボットです。小さな機器を身体に装着し、歩行状態を測定する「歩行測定ロボット」、身体に装着して歩行トレーニングの結果を記録データ化して、より効果的な歩行トレーニングを支援する「機能訓練サポートロボット」、リハビリテーションをサポートする「リバビリサポートロボット」の3つのタイプがあります。

介護ロボットは厚生労働省が主体となって支援

現在、さまざまな介護ロボットが導入されていますが、介護ロボットの実用化に向けて、厚生労働省が主体となり、経済産業省と連携を取りながら推進されています。厚生労働省では、開発前の介護現場におけるニーズ調査や、試作ロボットの検証を行います。一方、経済産業省では、介護現場から集約されたニーズを元に、民間企業へロボット開発や研究を支援します。また、試作ロボットを介護現場でテスト利用してもらい、その感想や課題点などを民間企業へフィードバックして、より精度の高いロボット開発に活かしています。この厚生労働省経済産業省とのチームワークによって、介護ロボットの開発および実用化が進んでいます。

介護ロボットの開発普及を促進

また、厚生労働省ではロボットの実用化のみならず、その開発普及にも取り組んでいます。介護ロボット開発における重点的な分野として下記の6分野13項目を掲げています。
●移乗支援
・装着タイプ
・非装着タイプ
●移動支援
・屋外タイプ
・屋内タイプ
・装着タイプ
●排泄支援
・排泄処理タイプ
・トイレ誘導タイプ
・動作支援タイプ
●見守りコミュニケーション
・施設タイプ
・在宅タイプ
・生活支援タイプ
●入浴支援
●介護業務支援

上記の分野における、介護ロボット開発に取り組む民間企業に対して、厚生労働省が以下の4つの支援策を行っています。
(1)協議会の設置
開発前の着想段階から開発の方向性について介護現場との橋渡しを行う。
(2)実用化の支援
開発中の試作機を介護現場で実証、介護職員と意見交換を行いアドバイスをフィードバック
(3)介護技術の開発支援
介護ロボットを活用した効果的な介護方法を支援。具体的には介護方法の手引書のマニュアル作成
(4)普及の促進
全国47都道府県において介護ロボットフォーラムを実施。開発の機運を高めるイベントを開催

補助金助成金で介護ロボット開発を支援】

介護ロボット補助金助成金も行っています。例えば、高齢者の自立支援に関する機器では上限で年間1億円、介護者の負担を軽減する機器や、高齢者の日常動作を支援する機器では上限で年間2,000万円など、その他にも目的に応じて複数の補助金助成金を用意しています。
また、介護ロボットが実用化された場合、介護施設への導入にあたって、製品の品質や形状、寸法などの規格化も、経済産業省との連携で推し進めています。より詳しく知りたい方は、「厚生労働省のホームページ」をご覧ください。

介護ロボットの導入・活用支援

他にも、介護施設の関係者向けの支援策も行っています。例えば、介護ロボットが新たに導入された場合、より多くの関係者に知ってもらうための、製品パンフレットの作成や、介護ロボットが体験できるイベントの開催、メーカーから介護ロボットを借りて、介護現場で試用してもらう等の支援を行っています。また、介護ロボットの導入を検討したい事業者に対して、経済的なサポートも提供しています。例えば補助金助成金での支援は、「介護ロボット導入支援事業」があり、1機器あたり移乗支援(装置型・非装着型)、入浴支援は上限100万円、その他は上限30万円を補助しています。他にも金融面でのサポートも行っており、独立行政法人福祉医療機構による無担保貸付や、日本政策金融公庫の低利融資などがあります。さらに詳しく知りたい方は、「厚生労働省のホームページ」をご覧ください。

高齢者および介護者の増加と、介護者を支える人員不足という避けて通ることができない社会状況の中、その打開策として官民が一体となって介護ロボットの開発が急速に進んでいます。とは言え、全ての施設での導入にはまだ至っておらず、導入費の捻出に不安を抱える事業者も多いようです。課題はまだまだありますが、介護ロボット導入への動きはすでに始まっていますので、今後の動向にも注視したいところです。


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